大学のサークル同期にとても寡黙な男子がいる
大学時代は週に何日も朝まで飲んで、卒業旅行も海外へ二回(学部・大学院)一緒に行って、卒業してからも頻繁に飲んでいた(いる)けど、誰が結婚したらしいよみたいな話をしているときに小声で「あ、オレも」と突然告げるようなひと
とにかく自分のことを自分から話すことをしないタイプ
学部の頃、彼は同じサークルの二つ下のNちゃんと付き合っていた
(これも気がついたら付き合っていた)
Nちゃんは可愛いくて愛想が良くてちょっと言動が不思議で好きなひとに好きを表現するタイプで、サークルの内外で私も含め男女から愛されていた
そんなNちゃんと超寡黙彼氏がどうやってコミュニケーションをとっているのかは最初から最後まで謎だった
たぶん彼に対するNちゃんの巨大な「好き」で成り立っていたのだと思う
たださすがにある時、Nちゃんが彼に「私のことをどう思ってるのかわからない」みたいなことを漏らしたらしい
私も含め周りは「いや〜そうだよな〜」としか思わなかったのだけど、その時の彼の返事は
「オレがNちゃんのことを好きなのは『りんごは赤い』くらい当たり前のことなんだよ」
というものだった
当時の私は即座に理解不能、いや「恋人の軽視」と判断し、彼のことを「ダメな彼氏」として笑った
ただ、なんとなく彼のこの返事は頭のなかに必ずしもネガティブでないものとして残っていた
それから5年、10年が経って、ようやく、彼は決してNちゃんの存在を軽視していたわけではないということが、頭よりもう少し心に近い部分で理解できるようになった気がする
寡黙な彼にとってはきっと、「『りんごは赤い』くらい当たり前なんだよ」はかまってちゃん彼女への適当な応答ではなく、(あるいは少し勇気を振り絞った)誠実な告白だったのかもしれない
愛の伝え方が人によって異なることに、愛と愛の可能性を感じるお年頃
(愛は熱いうちに伝えろ、とは思い続けているけどな)